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マッス(ル)・マッセン

今度一緒に旅行へ行きマッセン
そりゃ、ぜひ行きマッス

「マッス(ル)・マッセン」って何?
共通語の丁寧の助動詞「ます」 「ません」に対応する言い方です。ご存じのように、敬語には尊敬語・謙譲語・丁寧語がありますが、この「ます」は「です」と並んで話し手が聞き手に対する配慮を表す丁寧語に分類されます。「ます」は動詞に付き、「です」は形容詞や名詞に付きます。


■丁寧の助動詞「ます」の成立 漱石も気に入った「マッス(ル)」
参上する・差し上げる”などの意味を表す謙譲の動詞「まゐる」に使役を表す助動詞「す」が付いた「まゐらす」という言葉が語源なんですよ。「まゐる」という謙譲語は今日でも「お迎えがまいりました」や「おまいりをする」など、使われていますよね。

この「まゐらす」は平安時代の初め頃(9世紀の終わりから10世紀の初め頃)に京都で使われ始めた言葉です。その後「ゐ」の落ちた「まらす(る)」が室町時代の中頃(15世紀の終わり頃から16世紀の初め頃)に生まれます。また同じ頃に「まゐらす」から「まゐす(る)」も生まれましたが、これはあまり勢力を持ちませんでした。「まらす(る)」からは更に「まっす(る)」が生まれますが、謙譲の意味よりも丁寧の意味が強くなり、いつも動詞に付いて使われるようになって助動詞化します。最終的に「まっす(る)」または「まゐす(る)」から「ます」が江戸時代の初め頃に生まれますが、その過程で「申す」が影響を与えたんじゃないかと考えられます。
そして、この「まゐらす」から「ます」への変化の中間段階にある「まっす(る)」が九州方言で使われているのです。
例えば、文章として記されたものでは、夏目漱石の『二百十日』(明治39年・1906)に見られる例が有名です。これは明治32年(1899)漱石が熊本に英語の先生として赴任していたとき、阿蘇山へ登山をした際の話をまとめた小説です。その中に阿蘇の旅館で女中さんの言葉として「灰で御座りまつす」「御覧なさりまつせ」などの言い方が見られます。東京生まれの漱石には「まっす(る)」がたいへん印象深かったんでしょうね。

 どこで使われとうとかいな?
福岡県内では筑前・筑後、県外では熊本県・佐賀県・長崎県で打ち消しの「マッセン」や誘いかけの「マッショウ」などの言い方で使われています。
この「マッス(ル)」も、「エズイ」・「ゲナ」・「シェ・ジェ」・「タマゲル・タマガル」などと同じように京都の古い言い方が九州に残っている一例ですね。ただ若い人たちの間ではもうほとんど使われなくなっているようです。