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クル

もしも~し、今から車に乗ってクルけんよろしく~!
はいは~い、気をつけてきんしゃいよ。

「クル」って何?
共通語では電話で話している友達に対して「今度遊びにイクよ」「今からすぐにそっちへイクよ」などと言いますが、九州の方言ではこの"イク(行く)"を「クル」と言います。
共通語の「イク」は、話し手もしくは話し手側の領域を出発点にして別の領域へ移動する(出る)ことを言います。従って、「イク」の主語は話し手または話し手側の人物となります。 一方、「クル」は話し手などの領域外を出発点にして自分の領域へ移動する(入る)ことを言います。従って、「クル」の主語は話し手または話し手側以外の人物となります。
しかし、このような共通語の「イク」と「クル」の使い分けをせずに両方とも九州の方言では「クル」と言うのです。みなさんも電話で友達と話していて、相手の待っている所へ向かおうとするとき、「今からクルけん」など、言っていませんか。

  共通語 九州
「(福岡に住んでいる)私が東京へ」 イク クル
「久留米のおじさんが(福岡の我が家に)」 クル クル

この「クル」は、意味を細かく言い分けないという点で、「コマイ」「フトイ」と同じような現象なんですよ。このような意味の未分化は古い時代の日本語の姿を表しています。例えば、共通語の「イク」を「クル」とする言い方は奈良時代(8世紀)にできた『万葉集』にも出てきます。
大阪にいる男性(作者)が、奈良にいる恋人(または妻)に生駒山を越えて会いに行くという歌なんですが、その「私が行きますよ」という表現の中で「クル」が使われています。かなり古くからある言い方だということが分かりますね。
また、「クル」という言葉が共通語にあり、意味が少し広いという点で、「ナオス」と同じ一面を持っています。そのため方言だとは気づかれにくい言い方(地方共通語)の一つになっています。

 どこで使われとうとかいな?
上では大雑把に"九州の方言"と言いましたが、九州でも福岡県の東半分(筑豊・豊前地方)や大分県では使われません。福岡県の筑前・筑後地方から佐賀・長崎・熊本・宮崎・鹿児島の各県及び山陰(島根・鳥取)の一部や北陸(富山・石川)の一部などで使われます。このように西日本の周辺地域に広がっていることも、古い京都の言い方であることを示していますね。