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ペイルライダー

クリント・イーストウッドは西部劇スターとして世に出たわけだが、自身の監督作品として最も名高いのは、アカデミー賞作品でもある『許されざる者』(92年)であることは衆目の一致するところ。彼が「最後の西部劇」として作り上げたこの作品は確かに大変よくできた傑作であることは疑いの余地はない。しかしながら、同じジャンルに限定すると、より映画的な興味を喚起し、個人的に静かな興奮を覚えるのは『ペイルライダー』の方である。85年の秋に公開された時に、久しぶりに知名度のあるスターが出演する西部劇作品が劇場公開されるということで配給会社も大いに力を入れ、テレビの深夜番組でも「西部劇復活!」といった特集が放送されたりしたことを記憶している。まあイーストウッドの監督作品ということで、単純な痛快アクション映画になっているはずはなく、残念ながら一般的な西部劇復活の狼煙となるほどのヒットはしなかったようである。

舞台はカリフォルニア北部と思われる峡谷。小さな村落では川から時折採取される黄金を頼りにささやかな生活が営まれていたが、鉱山会社を経営するラフッド一家によって乗っ取られようとしていた。だがある時、救世主のごとく青白い馬に乗った(タイトルの由来)一人の流れ者が現われる。なんと牧師の装いだったことから、プリーチャーと呼ばれることになるのだが、一方ラフッド社は立ち退き工作が失敗し、業を煮やして保安官たちを使って攻勢に出る。いよいよ町中でプリーチャー一人と保安官たちとの最後の決戦が始まるのだが…。

公開当時によく引き合いに出されたのが、おなじみの名作『シェーン』で、確かに基本的な物語構造はよく似ている。しかしイーストウッド作品を注意深く観続けてきたファンは、これが彼の監督第2作目『荒野のストレンジャー』(72年)の、ほとんどリメイクと言えるような性格の作品であることをすぐに察知したことだろう。なんだかよくわからない西部劇として(?)ほとんど話題にならなかった『ストレンジャー』を中学生の時に劇場で観たことは私のささやかな自慢なのだが、どちらの作品も主人公の素性がまったく不明、という不可解さゆえに物語が神話性を帯びている。しかも本作の方は謎のガンマンが牧師という設定で、聖書の一節にしばしば言及されるなど、宗教的な匂いも加味され、より独特のムードを醸し出しているのが魅力。牧師と保安官との過去の因縁をほのめかすような描写やセリフもあるのだが、どれも本当にほのめかされるだけで、最後まで説明はなされない。分かりやすい勧善懲悪の西部劇を期待した人はきっと肩すかしを食らったことだろう。

先ほど「映画的な興味を喚起し」と書いたが、それが実感できるのは、まず撮影の素晴らしさだ。名撮影監督ブルース・サーティースとの最後の共同作業となった本作だが、得意の逆光を多用した人物や風景の描写、ただの黒ではなく漆黒とも言える凄みのある暗部の扱いなどは惚れぼれするほど。次に考え抜かれた人物の動き。画面をゆっくり横切るイーストウッドの歩く姿だけで芸術的だ。最後に音。牧師やラフッド一味が歩くときの靴音、拍車のかすかな振動音、銃に弾丸を装着する時の金属音、渓谷を疾走する馬の群れが発する地鳴りのような重低音。贔屓目に捉えているのはご容赦願うとして、こういった細部に宿った神の存在に言いようのない充足感を得られるのは、これが良質の映画であることの証左と思う。鑑賞時は部屋をやや暗くし、音量は心持ち大きめをお勧めしたい


フジマルタカユキ
1960年熊本生まれ。
中学生時代にテレビ洋画劇場にかじり付いて映画の魅力にハマる。ジャンルにこだわらないが、特に好きなのはマカロニ・ウエスタンかも。小・中学生の3人の子供たちを映画ファンにすべく画策するも道半ば。でも最近の作品って刺激が強くて子供に安心して観せられるものが意外と少ないような気もするのですが・・・。 本職は私大職員です。

ペイルライダー
1985/アメリカ/監督:クリント・イーストウッド
(c) Warner Bros. Entertainment Inc.

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洋画★シネフィル・イマジカ
  241ch
放送日時 11/14(金)23:30、11/15(土)15:00、11/26(水)21:00、11/30(日)12:30
ゴールドラッシュ時代のカリフォルニア。無数の小さな峡谷の一つ、カーボン峡谷。ここだけが唯一ラフッド一家の手を逃がれているが、陥落も時間の問題だった。カーボンの村に暮らす15歳の少女ミーガン、母のサラと、その婚約者ハル・バレットは、今日もラフッド社のいやがらせに遭い、ミーガンは愛犬を失った。その後、村の修復のため町に資材を調達に行った際、再びラフッド社のいやがらせを受けたハルは、正体不明の男に救われる。ハルが彼を連れて村に帰ると、ミーガンは彼が神につかわされた男だと直感する。サラはならずものとして嫌うが、男は夕食時に銃をもたず、牧師の格好をして現れ、皆を驚かせる。“牧師”は、ラフッド一家の仕返しも難なくかわし、サラとミーガンは次第に彼に好意を持つようになる。一方、業を煮やしたラフッドは彼に最強の敵を差し向ける…。
クリント・イーストウッド、マイケル・モリアーティ、キャリー・スノッドグレス