『ロード・オブ・ザ・リング』3部作で大成功を収めたピーター・ジャクソン監督が、そのご褒美(?)に長年の念願だった企画を実現できたのが、33年製作の古典『キング・コング』のリメイクだった。自身がもっとも愛する作品を、映画史上でも例のない破格の製作費を掛け、『リング』シリーズよりさらに進化したCGテクノロジーを駆使して作り直す作業は、彼にとって至福の時間だったに違いない。その結果上映時間208分という、これまた想像を絶する長編となって完成した。ストーリーは誰もが知っている巨大ゴリラと美女との悲恋物語であり、オリジナルに心から敬意を払って変な脚色はなし。エピソードは増えているものの、骨格そのものは全く旧作に忠実な再映画化と言っていい。日本で公開されたのは2006年の正月映画としてだったが、最初私は今ごろなぜキング・コング?と、その企画自体の意味がよくわからなったこともあって、劇場公開を見逃してしまった。今TVで観ると、やっぱり劇場に足を運んでおくべきだったと後悔しきりだ。もし可能なら、家庭でも大型TVモニターとサラウンド音響で楽しみたい。
この作品は76年にもリメイクされていて、この時も機械仕掛けの巨大コングが話題になったりしたが(こちらも今月オンエアされるので、比較して楽しむことができる)、今回のコングの造形・動作に関しては全く次元の違う精巧さに驚かされる。舞台となる髑髏島(スカル・アイランド)のジャングルやニューヨークのビル群の間を自在に飛び跳ね、障害物をなぎ倒すときの躍動感、顔(特に目)の動きで感情を表現する豊かな「演技」。言葉を持たない主人公が、堂々たる主演男優として機能しているといるのを見ると、この時代にリメイクする理由がわかるような気がしてくる。一人の女性と心を通じ合わせ、彼女を救うために体を張って敵に立ち向かう勇ましさ。そして彼女を見つめるときの哀しさを湛えた表情。大きな体で男の強さと優しさを見事に演じているコングこそ最大の見どころだろう。
人間はすべて脇役扱いといっても過言ではないのだが、演じる役者が上手いため、物語にずいぶん豊かさが加わったように思える。相手役(女優の設定)のナオミ・ワッツ、脚本家役のエイドリアン・ブロディもさることながら、いい味を出しているのがジャック・ブラックだ。『スクール・オブ・ロック』や『ナッチョ・リブレ』でコミカルな演技が持ち味だったが、ここでは取り憑かれたように撮影に命を懸ける映画監督役を演じている。この作品が異常に長くなったのは、前半に髑髏島で恐竜や巨大昆虫との壮絶なバトルが展開されるだけでなく、島に到着するまでの人物のエピソードやドラマが丁寧すぎるほど描かれているためだ。だがそこでのジャック・ブラックが決してオーヴァー・アクトにならずに狂信的な人物像を作っているのが、全体を通じての牽引力となっている、というのは褒めすぎだろうか。
とにかくこの映画はアクションとドラマが上手く融合していて、文句なしに面白い。島での恐竜との戦いは圧倒的な迫力だし、ニューヨークに舞台を移しての人間との戦いもとても良くできている。そしてラヴ・ストーリーとして最後に感情移入させる術も巧みなもの。鑑賞後の満腹感は自信をもって保証する。