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戦場のアリア

ムービープラスの作品紹介には、「フランス・スコットランド連合軍とドイツ軍が対峙する最前線で、敵対する兵士どうしが束の間の温かな交流を持つさまを描く。第一次世界大戦下のクリスマスに起こった出来事を基にした感動のドラマ」と書いてある。数十メートル離れて塹壕を築き、そこに身を潜める両軍。緊迫した状況が続く中、クリスマスの日を迎えたドイツ軍はなぜかたくさんのクリスマス・ツリーを並べ、テノール歌手が壕を出て朗々たる歌声を聞かせる。これにスコットランド軍がバグパイプで応じ、これをきっかけにして一夜の休戦となり、敵・味方が期間限定で交流をする、というお話だ。劇場公開を見逃していた私は、初めにこのあらすじを知ってこれで2時間どうやって引っ張るのかと余計な心配をしてしまった。しかしそれは杞憂に終わる。

この映画、両軍の兵士が心を通わせるクライマックスのシーンが全体のちょうど中ほどに訪れる。ということは、その束の間の安らぎが終わった後に、それぞれの軍の兵士たちがどういった運命をたどるのか、それが鑑賞後のテイストを大きく左右するというわけだ。ほのぼのとした友情の交感の後に休戦状態は終わりとなるが、以前のような攻撃の応酬は出来なくなる。それどころか、味方の攻撃を予告して自軍の壕に敵を匿うという不思議な光景。やがて兵士の手紙が次々と検閲されて、(上層部から見れば)異常な状況が明らかにされていく。スコットランド軍の指揮官はカトリックの神父だが、彼の行為を上位の聖職者は決して認めないどころか、兵士たちに対して「平和のためにドイツ軍を皆殺しにせよ」と説く。現代の状況と照らし合わせてもギョッとするメッセージだ。ネタばらしになるといけないので詳しくは書けないが、こういった苦味がこの作品の持ち味だろう。これまでこのコラムを読んでいただいた方にはお分かりいただけると思うが、私が映画の好き嫌いを嗅ぎ分けるときに最も重要視するのは、こういった苦いテイストの含有率である。だから本作品のような「感動的」なだけで終わらない映画が好きなのだろう。

余計なことかもしれないが、この話は第一次世界大戦を舞台にしている。最初は第二次大戦の話かと思い込んでいたので、国の関係が?であった。いずれにせよ兵士どうしが目視で戦っていた時代でなければ成立しないシチュエーションであり、ピンポイント爆撃の近代戦の時代にはこういった物語は生まれないだろう。戦争映画がクリスマスの特集としてふさわしいかを疑問に思う向きもあるかもしれないが、これこそクリスマスが主役とも言えるストーリーだし、その本質とは何か、を考えさせられるという意味でも見ておいて損のない作品だ。

少々苦言を。映画のポスターを始め、DVDのカヴァーでも大きく描かれているのが、テノール歌手ニコラウス(ベンノ・フユルマン)の妻で、ソプラノ歌手でもあるアナ(ダイアン・クルーガー)であるが、はっきり言ってこのキャラクターは本作には不要であったのではないか。戦場の最前線に起こった奇跡的な出来事に美しい女性が立ち会うのは、トップ歌手の夫婦であるという設定であっても場違いな雰囲気は否めない。むさ苦しい男だけのドラマにして、臨場感を高めた方がよかったのではと思う。


フジマルタカユキ
1960年熊本生まれ。
中学生時代にテレビ洋画劇場にかじり付いて映画の魅力にハマる。ジャンルにこだわらないが、特に好きなのはマカロニ・ウエスタンかも。小・中学生の3人の子供たちを映画ファンにすべく画策するも道半ば。でも最近の作品って刺激が強くて子供に安心して観せられるものが意外と少ないような気もするのですが・・・。 本職は私大職員です。

戦場のアリア
2005年/フランス=ドイツ=イギリス=ベルギー=ルーマニア/監督:クリスチャン・カリオン/123分
フランス・スコットランド連合軍とドイツ軍が対峙する最前線で、敵対する兵士どうしが束の間の温かな交流をもつさまを描く。第一次世界大戦下のクリスマスに起こった出来事を基にした感動のドラマ。
ダイアン・クルーガー、ベンノ・フユルマン