もうすぐ劇場公開期間が終了しつつあるロバート・ロドリゲス監督の『プラネット・テラー in グラインドハウス』は、いつにもましてB級テイスト100%(そもそもそういう企画で製作されたので当然ではあるが)で、しかも強烈に面白いハード・アクション・ゾンビ映画であった。ハリウッドではなく基本的に地元テキサスでの製作にこだわり続け、今や世界屈指の娯楽映画クリエイターとして認知されている。”デスペラード”3部作や『スパイ・キッズ』シリーズなどが代表作だが、『パラサイト』や『フロム・ダスク・ティル・ドーン』も個人的には大好きである(これ、前にも書いた記憶があるな・・・)。製作、脚本、監督、撮影、編集、音楽をすべて担当するスーパーマルチな才能にはいつも驚かされる。これで主演までやったら現代のチャップリンだ・・・というのは冗談として、これほどまでに作品を自分のカラー一色に染め上げなければ気が済まない監督というのも珍しいのではなかろうか。その意味ではこの『シン・シティ』は異色のプロダクションと言える。原作のコミックの作者であるフランク・ミラーを共同監督に迎えて、さらには盟友クエンティン・タランティーノにも特別監督として一部のシーンを監督させているのだ。
本作は特に関連がない3つのエピソードから構成されている(実は登場人物たちは微妙に遭遇しているのだが)。<1>――容姿は醜いが屈強な肉体を持つ仮出所中のマーヴ。彼は誰からも愛されることがなかったが、一夜の愛をくれた高級娼婦ゴールディを何者かに殺され、復讐に立ち上がる。<2>――罪から逃れるため過去を捨てシン・シティに身を潜めるドワイト。ある時、彼の恋人にしつこく付きまとう男を仲間ごと撃退するが、実はその男は警察官で、しかも娼婦街で殺されてしまう。その一帯を取り仕切る女はドワイトの昔の恋人で、この事件が発覚すれば警察との協定は破棄され、娼婦たちは窮地に陥る。彼女たちを救おうと一肌脱ぐドワイトだが・・・。<3>――少女の連続暴行殺人の犯人は街の実力者の息子。11歳の少女を人質に立てこもる彼をハーティガン刑事は埠頭に追い詰める。しかし、相棒の裏切りに遭い無実の罪で投獄される。8年後、出所した彼はかつて救い出した少女ナンシーが再び狙われていることを知り、最後の戦いへと向かう。
原作のコミックには全く門外漢なのだが、パンフレットなどで見る限り、そのダークな世界観はかなり忠実に表現されているのではなかろうか。タイトルどおりこの映画の主役は暴力に支配されたこの街そのものだ。白と黒のコントラストを強調した切れのあるモノクロ画面(パートカラー)に映し出されたハードボイルドの世界。コミック原作だけにあり得ない展開も多々あるが、テンポの良さと映像の力強さで一瞬も目を離せない。おなじみのハード・ヴァイオレンス描写も炸裂するが、モノクロなので現実感はなく、嫌悪感を催すほどではない。ただしR-15なので子供たちは見ないように。ブルース・ウィリスやクライヴ・オーウェンを始めとして一流のスターが嬉々として非情の男や女を演じているが、場面は少ないながら最も恐ろしいのはイライジャ・ウッドとデヴォン青木ではなかろうか。二人ともセリフなしで容赦なく人を殺めるシーンはかなり不気味だ。そしてミッキー・ローク!ここ10年近く泣かず飛ばずだった彼が特殊メイクでマーヴ役を熱演し、圧倒的な存在感を見せている。
この映画の背景などはほとんどがデジタル・エフェクトで製作されている。普段からCGを多用するロドリゲスに対して、アナログ派のタランティーノの演出シーン(C・オーウェンとベニチオ・デル・トロの車内での会話)はいつものように話に関係のないセリフが多くて微笑ましい。冒頭に書いた『グラインドハウス』のロドリゲス編とタランティーノ編はどちらも彼らの個性が色濃く出ていて、今年の収穫の一つだった。ロドリゲスのような作家性の薄い職人的な監督には、こういう大人のためのエンターテインメント作品とどんどん世に送り出してほしいものだ。現在製作中の続編『シン・シティ2』の公開が待ち遠しい。