アラン・パーカーという監督はよほど音楽に愛着と造詣が深いようだ。もともと『小さな恋のメロディ』(71年)の脚本を書いたことで映画界に入ったのだが、監督としての第1作『ダウンタウン物語』(76年)からしてミュージカル仕立てのコメディ(登場人物がすべて子供という異色作!)だった。その後も『フェーム』(80年)、『ピンク・フロイド/ザ・ウォール』(82年)、『エヴィータ』(96年)など音楽映画とも言えるような作品を手がけているだけでなく、ドラマ作品であっても効果的な音楽を採用して印象を強めることに成功している。音楽が主役でなくても重厚で良質の作品をたくさん生み出しているが、本作はまさしく音楽映画そのものであり、同時にドラマとしても非常によく出来た青春群像劇になっている。ロンドン生まれだがアメリカを舞台にした作品が多い彼にしては珍しく、これはアイルランドのお話だ。
ダブリンに本物のソウル・バンドを作りたいと夢みるジミー(ロバート・アーキンズ)は、新聞に募集広告を出してメンバー集めを開始する。ろくでもない連中が集まってくる中、なんとか使えそうなメンバーを選んでバンドの形にはなった。リード・ヴォーカルにはへべれけに酔って豪快な歌いっぷりを披露していたデコ(アンドリュー・ストロング)をスカウト、コーラスに仲間うちの憧れの女性イメルダ(アンジェリン・ボール)とその友人2人を誘う。未熟者のよせ集めではあったが、屋根裏部屋でのレッスンを重ね、数ヵ月後、この“ザ・コミットメンツ”はいよいよ市民会館の舞台でデビュー。拙い演奏ではあったが、地元の人々からは喝采を浴びる。その後次第に実力がつき始めるが、同時にグループ内の恋愛問題、意見の違いなど、摩擦が生じ始める。“ザ・コミットメンツ”の人気はどんどん高まり、レコーディングの話も舞い込むが、メンバーの間の亀裂はもはや修復のしようもなくなっていた・・・
主人公がバンドのメンバーではなく、マネージャーであるところがミソ。労働者階級の魂を歌うぞ!という掛け声はいいのだが、集まった連中は皆問題児ばかり。性格的に問題がある奴もいれば(特にヴォーカルのデコは才能はあるが、いつもリーダー気取りで最悪)、貧しい家庭環境によって道楽のような音楽生活を許されない奴もいる。エルビスやビートルズともプレイしたことがあるという中年のトランペッター・ジョーイ(ジョニー・マーフィ)が参加し、音楽的な支柱となってくれるのだが、女性関係にルーズでコーラス・ガール同士の揉め事を誘発するなど、平穏に事は進まない。マネージャーのジミーも決して「いい奴」ではないが、そんな連中と辛抱強く付き合うのも、ソウル・ミュージックを心から愛しているからだし、マネージメントすることが性に合っているからだろう。
実際に素人をオーディションで集めてキャスティングしているため、バンド結成への道のりは妙にリアリティがある。役者もそれぞれ個性が強く、キャラクターをよく表現していると思った。このあたりパーカー監督の演出力はさすがと思わせる。ライヴ・シーンの歌と演奏もうますぎず、下手すぎずで素人臭さを適当に匂わせているのが憎い。感心したのはラストのほろ苦さ。ハリウッド映画だとこういった感触はなかなか味わえないだろうなあと思った。