2007年の新春第1段としてご紹介するのは、本欄では初めての香港映画だ。70年代に映画の洗礼を受けた私は、当時人気のあったイタリアのアクションものは大好きだが、その後ブームとなったカンフーものや香港ノワールといったアジアのアクション映画とは無縁だった。ジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』シリーズもかなり後になってビデオで観たので、同時代作品とは言い難い。でも本作のような抜群におもしろいサスペンス・アクションを観ると、もっと早く香港映画作品を追いかけてもよかったかな、と残念な気もする。皆さんよくご存じと思うが、今月公開されるマーティン・スコセッシ監督の『ディパーテッド』はこの作品のリメイク版だ。アジア映画のリメイクものは日本のホラーが多いが、今回はスコセッシ監督の作品だけに非常に興味がそそられる。
ヤクザ組織に潜入した警官と警察に送り込まれたヤクザ者。身分を隠して情報を流す2人の葛藤がヒリヒリするような皮膚感覚で伝わってくる。特に悪の組織に送り込まれた警官は、バレたら即命を失う。これを演じるトニー・レオンの憂いを帯びた容姿がその状況を見事に表現している。対するニセ警官のアンディ・ラウは引き締まった顔立ちで意志の強さを感じさせるが、後半で彼も悪と善のどちらの道を選ぶか、重要な決断を迫られる。主役2人だけでなく、互いのボスを演じる役者も非常に個性のある顔付きで、やはりこの手の映画は役者の顔付きが決め手だとつくづく感じさせられる。昔のイタリアン・アクションも名優は出てなくてもいい顔した役者が多かったなあ。
アメリカ・リメイク版の主役はレオナルド・デカプリオとマット・デイモンだそうだ。ちょっと不安である。最初ブラッド・ピット主演で予定されていたが、結局彼は製作のみに関わっている。で、ボスがジャック・ニコルソンとマーティン・シーン。ちょっと大物過ぎやしないか。香港映画のいい意味での猥雑感、B級感はないだろうが、このところ超大作が続いてファンを心配させているスコセッシ監督が往年の切れ味を見せているか、素材がいいだけに期待せずにいられない。なお、香港版の本作ではほぼ同時期に続編2作が作られた(2の方は続編ではなくて過去のエピソードを描いたものだが)。実は私はどちらも未見なので、この機会に両方観ることにしよう。