昔観光で数日滞在したという想い出が強く印象に残っているので、アイルランドの映画というだけでどうしても贔屓してしまう習性がある。という話は以前「マイケル・コリンズ」を紹介したときに書いていたのだった。今月はそういうことで(?)比較的最近の作品「私を愛したギャングスター」を取り上げたい。下のストーリーを読んでいただくとピンとくる方もおられようが、公開当時「ルパン三世の実写版」と宣伝されたこともあった。アニメと比較されるとちょっとイメージが違うのでは、と思わざるを得ないが、アイルランドという国自体が地味で素朴な地域でもあるし、ハリウッド映画的華やかさとはテイストが全く違うというのが特徴だろう。ちょっとすっとぼけた味がある、コメディ風味の犯罪サスペンスといった趣だ。首都ダブリンでのロケが中心で、思い出深い風景がちらほら出てくるので、個人的にはとてもうれしかった。
主演のケヴィン・スペイシーはアカデミー賞を2度も受賞(「アメリカン・ビューティー」で主演賞、「ユージュアル・サスペクツ」で助演賞)している大スターだが、彼を好むかどうかでこの映画の楽しみ方も変わってくる。私は非常に彼を高く買っているので、この映画の強盗マイケル・リンチ役を嬉々として演じるスペイシーを十分楽しめた。強盗を決行するときの鋭い眼光と家での良きマイホーム・パパの笑顔の落差が微笑ましい。彼がアイルランド系なのかはよく分からないが。そうそう、今月は自ら監督・主演した入魂作「ビヨンドthe
シー ~夢見るように歌えば~」も他局で放映されるのでしっかり観なければ。
アイルランド映画界は資本的にはなかなか自国のみの資金では製作が困難らしく、ほとんどがイギリスやアメリカとの合作であり、この作品も製作国はイギリスとなっている。監督のサディウス・オサリヴァンはアイルランド紛争の悲劇を描いた「ナッシング・パーソナル」(まだビデオ化されていないと思うので、放映されたら貴重)で95年にデビューした俊英で、ロバート・デニーロが製作総指揮したTV映画「コーザ・ノストラ」を経てこの作品が第3作目にあたる。いずれも組織同士の紛争を描いてきた硬派の作風で知られているが、デビュー作とおなじプロデューサーと組んだ本作でやや作品の幅が広がったのではなかろうか。強盗団の仲間の一人でコリン・ファレルが出ているので、ファンの方は要注意。ところでラスト近くの例のシーンにモザイクがかかるのだろうか。ちょっとオリジナルのまま放送は無理でしょうね。(と意味深な書き方で失礼。)