福岡の地域情報をお届けするケーブルテレビのJ:COM福岡

Top > 映画 > 記者会見一覧 > 映画「夕凪の街 桜の国」合同記者会見

映画「夕凪の街 桜の国」合同記者会見
         

出席者
監督:佐々部清
出演:田中麗奈(石川七波役)

原爆投下から13年後の広島で、原爆症発病の恐怖を抱えながら生きる女性・皆実。時代は現代へと変わり、皆実の姪で被爆2世の七波が自身のルーツをたどる。「夕凪の街」と「桜の国」の二人のヒロインを通して原爆の悲劇を描いた、こうの史代の同名原作漫画を「半落ち」「出口ない海」の佐々部清監督が映画化した。 声高に反戦を訴えるわけでもなく、生きることに真剣に向き合うヒロインたちの姿は、見る者の心を揺さぶる。佐々部清監督と七波を演じた田中麗奈さんが来福し、この作品に込めた熱い胸の内を語ってくれた 。

Q.七波と皆実を田中さんと麻生さんに決められた理由を教えてください。

監督:「桜の国」のヒロイン・七波は現代女性の代表的な存在で、この女性を演じられるのは誰だろう?と考えたときに、田中さんの溌剌とした強い目の力がある、そして背筋がピンと立っているところが七波と似ていて、この人が演じてくれれば七波はきっとうまくいくと思いました。「夕凪の街」のヒロイン・皆実は、昭和の匂いがして儚げな人がいいなと思い、以前から注目していた麻生久美子さんにお願いしました。

Q.お仕事されるのは初めてということですが、いかがでしたか?

監督:七波役は映画の中で一番難しい役で、ヒロインに大きなドラマがないんですね。微妙な心の変化があって、でも僕は自信がなかった。導き方をよくわかっていなかったので、女優としての彼女の力量に賭けてみた部分が大きいです。僕の想像よりもいい田中麗奈が撮れたと思います。

田中:私は監督のデビュー作「陽はまた昇る」のファンで、いつかご一緒してみたいと思っていたのでとても嬉しく思っています。人と人との結びつきや、人の感情がそのまま画面に映るんだということを教えてもらいました。刺激をたくさん受けたし、監督のおかげでのびのび演じることができました。

Q.七波を演じてみていかがでしたか?

田中:彼女の前向きなところは私とよく似ているなと思いました。彼女は被爆者2世という宿命を背負って生まれて、原爆の後遺症のために母親を失うという体験をしていて、私の想像も及ばない悲しみが彼女にはあります。そこの部分を演じるのは難しかったです。


Q.原作をとても誠実に映像化しているなという印象を強く受けました。映画化するにあたり、大切にされたことは?

監督:こうの史代さん原作は温かい感じを受けますね。原作の持つテイストを壊さないように、鋭いカメラワークや画作りを避け、色彩もタッチも柔らかい感じになるように心がけました。原作は、声高に被爆者への差別や偏見、核廃絶など社会的なことを強く訴えていないのだけど、日常の中に人の喜びや悲しみをまぶしてある。だからデフォルメした芝居を避け、麗奈ちゃんにも麻生さんにも常に自然体でいるようにとお願いしました。


Q.演じながら「夕凪の街」を意識したところはありましたか?

田中:意識はなるべくしないようにしました。「夕凪の街」は原爆で受けた被害の悲しさが描かれた物語なんですけど、「桜の国」はテンポの良さや七波が生きることに前向きであることなど、「夕凪」とは全然違う表現にしたいと監督がおっしゃったので、私は軽やかに演じたいと思いました。

Q.二つの物語をひとつの映画として描くことの意味とは?

監督:「夕凪の街」だけで1本の映画は撮れると思います。でもそれは、原爆は悲惨でつらくてやるせないものなんだということを提示する映画で終わってしまう。僕は、「夕凪の街」は「桜の国」の補足だと思っています。最初の1時間で原爆の恐ろしさを感じてもらって、その苦しみを背負っても人はちゃんと生きていかなくてはいけないということを「桜の国」というパートが語っている。僕にとってはそれがとても大事で、命の大切さ、生かされていることへの感謝を描くためにはこの原作が必要だったんです。
この素材だけは日本で日本人じゃないと作れない作品だと強く思っています 。


Q.映画を撮る前と撮り終えた後で、ご自身の中で何か変化が生まれましたか?

田中:以前は、広島の人たちが思うように戦争や原爆について思うことができませんでした。でもこの作品と関わって、広島の街の抱える痛みは広島の人たちだけのものではない、日本人全員のものなのだと意識が変わりました。

本作が製作される際、内容が地味だからと大手配給会社が配給を断わったいきさつがある。「だからよけいに闘志がわいた」と語る佐々部監督。
世界で原爆が投下されたのは日本だけであり、その後遺症や無意味な差別に苦しむ被爆者や被爆2世、3世の存在を知ること、そして8月にこの作品が公開されるのはとても意味のあることだ。
「七波を演じて、以前にも増していろんなことに感謝するようになった」と語る田中麗奈さん。劇中で“自分は生きていいのか”と自問自答する皆実。今こうして生きていることがどんなに幸せなことなのか実感させられる。たくさんのメッセージが込められたこの映画を見て、何かひとつ感じとっていただきたい。

映画「夕凪の街 桜の国」
公式オフィシャルサイト>>>