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「Sweet Rain 死神の精度」筧昌也監督単独インタビュー
         

人気作家・伊坂幸太郎のベストセラー小説「死神の精度」を映画化した「Sweet Rain 死神の精度」。“ミュージック”をこよなく愛し、7日後に不慮の死を迎えることが予定されている人間の前に現れ、死なせるか、先送りにするかを判別する死神の千葉が、その対象となった一恵と出会ったことで、人間の感情を理解し、人生を知っていく姿を描くファンタジーだ。

監督はファンタジーとユーモアにあふれる独特な作風で今、日本映画界が注目する筧昌也。本作が初の長編映画監督デビューとなる若き才能に作品について伺った。

Q.原作は6つの短編からなっています。その中で3つのエピソードを映画にされていますが、最初の藤木一恵のエピソードと、3つ目のエピソードに登場するかずえは、原作では別人ですよね?

監督:最初は4つの短編を映画にしようと思って脚本を書いたんですが、「これは無理です。4時間の作品になります。」と言われまして(笑)。別に4時間になるから3つの話にしたわけじゃないですけど、4つのうちの2つの話が似ているんです。それで3編でやることに決めました。 大事なのは主人公の死神です。時代が変われば人それぞれの喜怒哀楽が変わっていくというコントラストを出すために、死神を仕事としてやっている千葉というキャラクターが対象者と関わっていくたびに少しずつ変化していく様子は映画の武器になるなと。 映画は小説とは違ってお客さんを暗闇に座らせて他のことはできない状況にするわけですから、それはちゃんとした強固なつながりにしようと思いまして、しっかりとリンクした物語にしました。

Q.死神の登場シーンがとても面白いと思いました。次の現場の入り口がちゃんと「扉」になっていて。そのアイデアはどこから出てきたんですか?

監督:あれはただやりたかっただけなんですね(笑)。ファンタジーというのはどの作品でも“扉”が大事で、「ドラえもん」もそうじゃないですか。「ナルニア国物語」も扉が出てくるし、「スーパーマン」も電話ボックスから出てくるし、なんか扉ってキーだなって思っていて。
映像でああいうことをやると一発で「ああ、これはファンタジー映画なんだな」って観客はわかるじゃないですか。要はそういうことです。

Q.死神の相棒を黒い犬にしたのは?“魔女に黒猫”みたいな感じなんですかね?

監督:ああ、「魔女の宅急便」ですか?

Q.そうです(笑)個人的な発想なんですが。

監督:僕が最初に考えた相棒はカラスだったんです。黒いカラスは不吉な感じがするし、実際に忌み嫌われていますし。実はこの作品って探偵ものぽいなと思っていたんですよ。1週間調査期間があって、どんな人間か素行を調べて、(対象者が)生きるべきか死ぬべきか判断して、なんか探偵ぽくないですか?

Q.なるほど、言われてみればそうですね。

監督:仕事の経過をICレコーダーみたいなもので記録するというのも考えたんですけど、なんかデジタルっぽいなと思って。物語の時代も変わっていくし、じゃあいつの時代でも大丈夫なのって何かな?って考えた時にCGでカラスを登場させようかと。
でも、このファンタジーは日常の延長上にあるファンタジーにしなくてはと思ったし、死神役を金城さんというキャスティングの妙で見せるということをやっているのに、相手役をCGに頼ったりしちゃったら世界観をぶち壊しになる。それに芝居のことを考えたらやっぱり犬かなと思ったんです。
犬を連れて歩いている人って普通にいるし、たまたま黒い犬を連れて白い手袋をした人がいたら死神かも知れないなと思っている人がいるかもいれない。あの犬に死神のルール設定を託したんですけど、そのアイデアが出てくるまで半年かかりました(笑)。

Q.そんなに!そもそも従来の死神のイメージを最初から取っ払っている作品ですもんね。

監督:皆さんが思っている死神像って暗闇から枕元にやってきて本人が殺すという風なイメージがありますよね。この作品はそういうのとは全然違うし、ゆるいじゃないですか、設定が(笑)。別に人を殺さないし“実行”とか“見送り”とか言っているけど、結局何をしている人かっていうと審判みたいなんですよ。それって「死神」じゃないですよね(笑)。
ファンタジーってルール説明が必要なんで、いかにスムーズに面白可笑しくいつの間にか見ている人が学習できて世界観に入っていけるとなると、犬との会話かなと思いました。

Q.金城武さんは現場でどんどんアイデアを言ってきたと聞いていますが。

監督:10代後半から映画の世界で生きていて、その殆どが主役ばかりですよね。主役をやっている方って出番が多くてずっとその作品に付き合っているわけで、多分見え方が俯瞰(ふかん)に見えてくるでしょうね。
金城さんは活躍の場が中華圏を中心にハリウッドの監督とも仕事をしているみたいで、向こうでは現場でアイデアを出すのは当たり前みたいですよ。こんなにいろいろ言ってくれる人と仕事をしたことがなかったんで最初はびっくりしましたが、素直にいいなと思ったら受け入れて、違うと思ったらそう伝えたし、毎日その繰り返しでした。

Q.海辺に立つ美容室のセットが素晴らしいですね。

監督:あのセットは室内よりも室外を先に撮ったんです。ある海辺に建てたんですけど、かずえ役の富司純子さんが「感動して一気に美容師役がやりやすかった」とおっしゃっていました。
僕はこれまでTVや低予算のショートフィルムをやっていて、予算がないと美術費を削らないといけなかったんです。芝居を考えた美術とか作り方をしてこなかったのですが、美術監督の清水さんはそこまでのことを考えて、無駄になってもいいからと深いところまで作り込んでくれました。
例えば、セットのレジの引き出しに小さな電卓や領収書が入ってるんですよ。そんなのカメラには映らないんですけど、待ち時間に役者さんがパッとレジを開けたときにそれを見たら、本当の美容室に居るという感じがするじゃないですか。美術さんの粋な計らいですよね。 。

【プロフィール】
筧昌也(かけひまさや)
1977年東京都生まれ。日本大学芸術学部映画学科映像コース卒業。14歳の時に「妖怪のいる街」でビックコミックスピリッツ月例新人奨励賞受賞。その後、漫画を描き続けながら、本格的に映像制作を始める。
98年『スクラップ』、2000年『ハライセ』と続けて、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭に連続入選。03年、映画『美女缶』がゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター部門グランプリ受賞。ぴあフィルムフェスティバルアワード2003企画賞を受賞し、04年劇場公開される。05年には「世にも奇妙な物語 春の特別編」にて妻夫木聡を主演に迎えセルフリメイク。また、小説「美女缶」(幻冬舍 刊)も自ら執筆。07年劇場公開映画『恋するマドリ』(主演:新垣結衣)の原案を担当。
自身が手がけたショートフィルム『ロス:タイム:ライフ』がフジテレビで連続ドラマとして放映中(土曜日23:10〜)。

映画「Sweet Rain 死神の精度」
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