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出席者
監督:是枝裕和
Q.ある夏の一日を描こうと思われたのは?よくあるドラマだと起伏のある物語を描きがちになりますが。
なんだろう、なんか夏だったんですよね(笑)。バラバラに暮らし始めた家族が集まるとすると正月か誰かの法事なんですよね。正月だとちょっと日常性が薄れるからじゃあ法事だなと思って、それで夏にしたんです。
たぶん何にも起きない一日の中に何かが起きたときの余韻と、これから起きるであろうあの家での変化の予兆のようなものがちょっとだけ見えるほうが怖いなって思ったんですね。15年前に大きな事件が起きて、そのことの余韻と母親の歪みが増幅されているだろうけど、それに息子が触れて、そしてこれから老いていくだろう父親の老いを垣間見る。でも何かするわけじゃなくて、どうでもいい一日のほうがいいだろうと思ったんです。
Q.家族の団欒のシーンがいいですね。一見仲が良さそうなんだけど、互いを探っているという感じがすごく出ていました。
じつは全然家族の団欒じゃないんだよね(笑)。子供の頃に見ていた親戚の家に集まる嫌な感じ、「絶対この人ってあの人のこと嫌いだよね。」って、子供ってよく見ているじゃない?そういう感じは出そうと思ったし、自分を息子の立場に置いたら実家に帰る前からどうやって長居しないで自分の生活に戻るかと考えている自分を重ねてみようと思ったし。すごく厄介でしょ?家族って。もちろん愛おしいところもあるかもしれないけど、ああいう時間が厄介だなーというのがちゃんと出たほうがいいなと思ったんで、それぞれの立場の厄介さをきちんといろんなシーンで出そうと思いました。
Q.キャストの息の合った演技が素晴らしいんですけど、特に母親役の樹木希林さんの存在感が光ります。母親役を樹木さんにと思われた理由は?
辛らつなところですね(笑)、もちろんほめ言葉ですけど。お芝居していて善人に見えないし、見せようともしていないですし。普通は多分、嫌な人に見られたくないんですよ、人って。それは役者も同じだから、どっかでいい母親を演じたりとか、今回の役で言うとどっかで悲しさを見せようと計算したりすると思うんですけど、希林さんという人は全くそんなところがない。僕の母親の持っていた辛らつさとか残酷さを重ね合わせてじゃないですけど誰かにやってもらうんであれば希林さんしかいないなって思ってお願いしました。
Q.YOU(娘役)さんとの掛け合いもバッチリでした。本当の親子かと思うくらい。
あの二人の掛け合いで映画が始まって、あそこで親子に見えなかったらこの映画は負けになるくらい大事なシーンだったんだけど、二人は楽しんでいてカットがかかってもずっと同じようにしゃべっていましたね。
Q.何気ない台詞もすごくリアルなんですが、アドリブはあったんですか?
ほとんどないです。俳優さんたちが僕の書いた脚本を彼らが消化して肉声として出してくれたんですよね。だから僕も自分で書いたのに現場で聞いていると「アドリブじゃないか」と思うことも何度かありました。さっきの質問の続きでいうと、「あんた綺麗な顔してんだからおでこもっと出しなさいよ。」ってYOUさんの前髪を触るシーンは希林さんが本番待っている間にやっていたのをいただいて(笑)。
Q.家のセットや小物ひとつひとつにどっかで同じものに触れているという感覚がありました。細かなデティールは監督の中にずっとあったものなんですか?
あのセットが出来上がったときに、この空間の中で何が生まれるだろうって、目の前のセットと役者から発想をして作っていったところも結構あります。ある意味、あの家が主役だった部分はあると思いますね。あの空間の中に響いてくる音だったり、色だったり、そこから想起される味だったりがいろんな刺激をするんだと。それは登場人物たちもそうだっただろうし、見た人もそうだろうし、あの家が持っている時間の流れとか時間の積み重ねとか、一日の中で見えてくるあの家族の過去とか未来とか、あの時間と空間に凝縮されていてそこに人間が加わっているから。だから家が主役という意識はずっとありました。
映画「歩いても
歩いても」
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[ 是枝裕和監督プロフィール]
1962年、東京生まれ。87年に早稲田大学第一文学部文芸学科卒業後、テレビマンユニオンに参加。主にドキュメンタリー番組を演出、現在に至る。
95年、初監督した映画『幻の光』が第52回ヴェネツィア国際映画祭で金のオゼッラ賞。04年の『誰も知らない』では主演の柳楽優弥が史上最年少でカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞し話題を呼ぶ。他に、『ワンダフルライフ』(98)『ディスタンス』(01年)、『花よりもなほ』(06)。 |
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