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アキレスと亀

監督:北野武
出演:ビートたけし/樋口可南子/柳憂怜/麻生久美子/中尾彬/伊武雅刀/大杉漣
('08日本/東京テアトルオフィス北野)119分
公式オフィシャルサイト

(c)2008「アキレスと亀」製作委員会

ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13

裕福な家庭に生まれながら、突然の両親の死によってひとりぼっちになってしまった真知寿(吉岡澪皇)。それ以来、彼はずっと描いてきた“画家になる”という夢だけを人生の指針として生きてきた。青年に成長した真知寿(柳憂怜)は、バイトで貯めたお金で美術学校に通っていた。そんな真知寿の前に一人の理解者が現れる。絵に対する彼の純粋さに心惹かれた幸子(麻生久美子)。2人は結ばれ夫婦となる。中年になった真知寿(ビートたけし)の描く絵はまったく売れなかったが、幸子(樋口可南子)とともに創作に励んでいた…。
北野武監督の作品は、極めて作家性が強い。だからよく“わからない”と言われる方も多いが、この映画のタイトルはそのことを逆手にとったようなものだと感じる。「アキレスと亀」はギリシア時代からの数学上のパラドクスで、今回、主人公を画家にした北野監督の狙いに思わずニヤリとした。
主人公の真知寿(まちす)は、画商に絵を見せるたびに否定され、要望どおりに絵を描いてもなかなか認められない。だがその画商はただ同然で手に入れた真知寿の絵を適当な理由をつけて売っている(きっと)。まんまと騙されている真知寿が気の毒に思えてならないが、真知寿はひたすら絵を描く。彼は絵を描いているだけで幸せなのであって、絵のためだったら命も惜しまない。そんな彼の純粋さを理解しているのが妻の幸子だ。妻役を演じた樋口可南子が素晴らしく、二人のやりとりは夫婦漫才のようにコミカルで微笑ましい。そしてここでもすべての北野作品に通ずる“死のにおい”がつきまとう。真知寿と関わる人間が次々と死んでいき、その死さえも絵にしようとする。これを天才といわずになんという。真知寿=北野武という方程式が何度も頭をよぎる。
劇中の挿入画はすべて監督自身によるもの。まさにこの作品自体がアートなのだ。