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江戸後期、不幸な結婚生活に耐える野江(田中麗奈)はある日、1本の山桜を見つける。花に手を伸ばすと、背中に突然男の声が響いた。「手折ってしんぜよう」
彼は野江が今の婚家に嫁ぐ前に縁談を申し込んできた相手、手塚弥一郎(東山紀之)だった。自分を気遣ってくれる人物の存在に勇気づけられる野江。それから半年後。手塚は悪政をたくらむ藩の重臣を斬ってしまう。愕然とする野江。手塚の所業を侮蔑し、笑い飛ばす夫に怒りをあらわし、野江は磯村家から離縁を言い渡される…。
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珠玉の短編として名高い藤沢周平の「山桜」を映画化。
最初の結婚で夫を亡くし、二度目の結婚も不幸なもので、野江はすでに人生を諦めかけてきた。叔母の墓参りの帰り、一本の桜の木の下であるひとりの武士、手塚弥一郎と出会う。自分を密かに見初めてくれていたという弥一郎との出会いが野江の人生を変えていくことになる。
藤沢文学の中で主人公の視点が女性という本作。二度目の嫁ぎ先からも離縁を言い渡され、実家に戻ってきた野江が、亡き叔母のようにひとりで生きていくことを考える。そんな娘に母は「あなたはただ回り道をしているのです」と諭す母の深い愛。そしてのちに出会う弥一郎の母の包み込むような笑顔。野江を演じた田中麗奈の瑞々しさもいいが、それぞれの母親を演じた檀ふみ、富司純子の演技の素晴らしいこと。弥一郎を演じた東山紀之は、台詞は少ないが凛とした立ち振る舞いと殺陣の美しさは目を奪われる。
監督は、本作が初の時代劇となる篠原哲雄。小説が持つ品格を見事に映像に映し出している。 |
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